悔いのない人生を送るためには…「宅急便」創始者・小倉昌男が語る
【連載】「あの名言の裏側」 第6回 小倉昌男編(3/4)相手の身になって考えることの大切さ
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一生を終わったとき、人はその結果よりも、いかに人生を生きてきたかということのほうが、はるかに大事だったことに気がつくであろう。
(中略)
企業人としての卒業を迎えたときに、悔いのない人生を送れたと感じることができたなら、その人は幸せな人だと思う。
(小倉昌男『やればわかる やればできる』より)
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結果より、いかに生きたか。そう説く小倉氏の言葉に、言い包められるような窮屈さ、夢や希望を持つことを否定されるような理不尽さを覚える人もいるかもしれません。でも、小倉氏の発言を“経営者の詭弁”のように捉えてしまうのは、短絡的に過ぎるのではないでしょうか。
本稿の第1回で紹介したように、小倉氏は自分に合った仕事を見つける極意について、「どこかに『好きな仕事』があるのではなく、目の前にある仕事を好きになれるかどうかが大事」と説明しています。現実的な仕事の世界においては、夢や希望を絵空事のように語る前に、まず目の前にある課題に真剣に取り組んでみること。そこから開けてくる展望もあるはずだ、というわけです。翻って、自分の明確な意志と積極的な行動を持って誠実に物事に取り組まなければ、どんな夢も希望も叶うわけがないと解釈することもできそうです。 『やればわかる やればできる』にある「自分の頭で考えよう」というコラムで、小倉氏は新人に向けて「仕事を機械的に覚えず、考えてやってほしい」と述べています。
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この仕事の目的は何か、いちばん大事な点は……など、自分の頭で考えながら仕事をやるのと、そうでないのとでは、大きな違いができてくるからである。
会社の仕事は、大勢の人で分担してやっている。ひとりひとりの仕事は単純であるが、それはある目的のために行っている仕事の一部分である。だからその仕事だけ見ていると、何を目的としてやっているかわからないことが多い。だが頭をちょっと働かせれば、何のためにやっているのかわかるはずである。そうすれば、どういうやり方がいいか、また手を抜いてはいけない大事な点は何か、といったことがわかって、良い仕事をすることができる。また、時代が変わり、状況が変化して、やり方を変えなければならないのに、そのままになっていることに気がつき、仕事を改善することもできる。つまり、機械とは違う、人間らしい値打ちのある仕事ができるのである。
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「相手の身になって物事を考える」「自分の頭できちんと考えながら物事に取り組む」──折りに触れて、そうしたことが実践できているか振り返ってみるところから、より良い人生が始まるのかもしれません。
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